まだ昼間は日差しに温もりがありますが、朝晩は本格的な冬をしっかりと感じる今日この頃となりました。こんにちは、長井です。
今回ご紹介させていただく著書は、2020年ベストセラーになった「ケーキの切れない非行少年たち(宮口幸治著)」です。もしかしたら、タイトルを聞いたことがある方も多いかもしれませんね。文庫本で、1cm程の厚みですので、気負わず手に取りやすい本です。無論、私もそう感じたので読んでみることにしました。今日もその中から、心に残った内容を少しお伝えできればと思います。
舞台は少年院
本書は、少年院にいる非行少年たちを主人公に話が進みます。
とある凶悪犯罪に手を染めた非行少年たちに、
「ここに丸いケーキがあります。三人で食べるとしたらどうやって切りますか?」とA4サイズの紙に円を描いて、問題を出します。すると、「う~ん」と悩みながら固まってしまい、縦に切って、その後また悩み続けたそうです。その後、何度か問題を繰り返しやり直してみても、四つに分けてしまったり、不正解を続けるのです。これらのような切り方は小学校低学年の子どもたちや、知的障害をもった子どもに時々見られることだそうですが、問題は、このような切り方をしているのが強盗、強姦、殺人事件など凶悪犯罪を起こした中学生や高校生の年齢の非行少年たちであるということです。彼らに、非行の反省や被害者の気持ちなど複雑な感情を考えることは難しく、反省以前の問題であると本書では説いています。
私は「反省以前の問題」という言葉を読んだとき、衝撃を受けました。私からすると犯罪に手を染める非行少年たちの考えが、理解不能であると思っていました。しかし、張本人である非行少年たち自身もまた、犯罪をするとその後、自分がどうなるか、周りがどうなるのかを予測して考えることができないまま、犯罪に手を染めてしまっているのです。非行少年だけではなく、刑務所にいる大人にも、よくみられることだそうですが。
軽度知的障害とは
現在の知的障害者の定義とは、おおよそIQ70未満で社会性に問題が生じるとされていますが、1950年代ではIQ85未満と定義されていました。IQ70未満の障害者は2%いると言われ、IQ85未満の軽度知的障害者は14%いると言われています。1950年代の定義で言えばかつてのIQ70~85までの軽度知的障害者は10人いれば1人以上いる計算になります。非行少年たちもかなりの割合で軽度知的障害を持って生まれているそうです。時代が変わったからと言って、以前の値が変化するわけではありません。今も普通に生活していれば気づかれないかつての軽度知的障害者は、思っている以上に皆さんの周りや、あるいは本人たち自身も気づかずに生活されています。だからこそ、周りの大人が出来るだけ早く、出来れば小学校低学年くらいから支援してくことができれば、非行や犯罪に手を染める少年を減らすことができるのではないかと本書では説いています。
犯罪に手を染めることは決して許されることではありませんが、そうなってしまう前に何か手を差し伸べる術はないものかと、考えさせられました。と同時に、想像力の重要性も痛感させられました。
この著書は、教育現場に立っている方にはぜひ読んでほしいと思いました。そうでない方にも、このような生きづらさを抱え生きている人がいるということを知ってもらえるきっかけになる一冊であると感じました。