書籍紹介

15歳のコーヒー屋さん 発達障害のぼくができることから ぼくにしかできないことへ

 最近はだいぶ暑い日も多くなってきましたね。暑い日が続くと体調にも影響が出やすいので、くれぐれもご自愛くださいね。

今回の本は10歳でアスペルガー症候群と診断された男の子が著者です。その著者が小学3年生になった時、通っていた小学校のクラスがにぎやかというより皆が好きなことをしている様な雰囲気だったそうです。聴覚過敏があった著者の響さんは、授業中落ち着いて座っていることが出来ず、教室内をウロウロしたり寝転がってしまったりしたことから、診断を受けるきっかけとなったそうです。

 中学生になり、提出物を出すこと難しいことが一番のネックとなり、勉強や部活動(運動部)にもついていけなくなったりと、自分の居場所が学校にないと感じるようになり不登校になります。しかし、家族の支えもあり最終的にはたった15歳で焙煎士となり自分のコーヒーショップを持つまでになられた、そんな努力の人です。

本書では、響さん本人の経験や気持ちはもちろん、母親目線、父親目線、また専門医の解説などもあり、一冊で沢山の方の想いや考え方に触れることができます。文字もぎっしり詰まっているような本ではないので、とても読みやすいです。

 そんな本書の中で、印象に残った場面を少しだけご紹介します。

 響には「なんとかしてあげたいな」と思わせる才能がある

 これは響さんのお父さんのお話です。

 「中学に入り、響は彼なりにとてもがんばっていました。だけど、とにかく不器用だった。手先の動きがというのではなく、できないのにそこに真正面から突っ込んでいくような不器用さがあった。でもそこが響の魅力。驚くほどに性格がまっすぐで、ずるもしない。だからこそ手を差し伸べたくなる、そんな風に思わせる才能がある。」と本書で綴っています。

 これにはとても共感しました。例えば発達障害をのある子どもは、相手の発言を言葉通りの意味にしか受け取れない特徴がある場合が多いため、人の言葉の裏に隠された思いを探ることは困難です。でもだからこそ、素直な子が多いように感じます。こうしましょうと言われたことに対して素直で、そして疑いもしません。そこに「こだわり」のような特性が加わることで社会では生きづらさを感じますが、本来誰よりも素直に物事を受け取ることが出来ます。だからこそそんな素直な彼らには「何とかしてあげたい」であったり「その子のために何かしてあげたい!」と支えたくなる、そんな魅力を日々私も感じています。

家族という小さな社会を回していく

 これは響さんのお母さんのお話です。

 響が家にいるようになり、出来ないことに目をむけては「ぼくは何をやっているんだろう」と頭を抱えていましたが「できないのが、ひーくんじゃん。ひーくんにしかできないことがあるんだから、それでいいんだよ。」と弟が慰めていました。「絵が上手で、盆栽にも詳しくて、カレーも作れる」というように、弟たちは、響の良い所をたくさん知っていて、それを純粋にすごいと思っていて、お兄ちゃんとして尊敬していたのです。家族も一つの社会。そこが回りだせば、社会も回りだすのではないかと思えた瞬間でした。と綴られています。

 人より苦手なことが多くても、その人にしか出来ない事や、役割が世の中には存在していて、響さんの弟さんのように出来る事に純粋に尊敬の念や認めあえる関係性が当たり前の様に社会に浸透したら、どんなに素敵だろうと感じました。

 今回紹介した部分は、響さん本人の想いではなく、周りの人目線ばかりになってしまいました。おそらく自分の置かれている環境によって、共感するポイントが変わるようですね。もちろん、本書は響さん本人の熱い想いのこもった一冊になっています。その辺りはこの本を実際に手にとって頂ける機会がありますと、嬉しく思います。