書籍紹介「私たちは生きづらさを抱えている」

姫野桂さんの「私たちは生きづらさを抱えている」

発達障害のある成人21名(姫野さん自身を含むと22名)のインタビューから、発達障害のある方の「生きづらさ」をわかりやすく伝えてくれる書籍です。

これは、発達障害のある方やその関係者だけではなく、人間理解のためにすべての方に読んでいただきたい書籍です。私自身もこれまで障害について勉強してきましたが、発達障害のある方の思いを知ることでさらに人間に対する理解が深まりました。

発達障害は脳の特性によるもので、後天的な人間関係や体験によるものではありませんが、本人自身に発達障害についての理解がなければ、二次障害として様々な問題が起こることがあります。

書籍の中で、自身が発達障害であることを知らずに生きてきたため、多くの人にはできることができずに自己肯定感が低かったり、努力不足であると判断されて辛い思いをしたという方がたくさんいらっしゃることが紹介されていました。その結果、仕事がうまくいかずにうつのような状態になったり依存症になったりと二次障害が起こり、大変な目に遭ったというケースも多いようです。

「発達障害」であることを知ることで、自尊心が回復

発達障害であることを知らされることは当事者にとってはまだまだショックなことのようですが、そのことによって自分の特性についての理解を深めることができます。そうすると今までは努力不足や頭が悪いのではないかという否定的な自己イメージを持っていたことが、単なる脳の違いによるものでありることが分かり、「自分は悪くない」と理解できて、自尊心が回復します。自分の持つ特性とうまく付き合って、他の多くの人とは違う工夫をすれば社会生活を堂々と営めることも分かるため、やはり、自分を理解するためにもまずは自分の特性を知ることが大切だと思いました。

とても読みやすいので、おすすめです。図書館にも置いてあるところが多いと思います。

特性を尊重し、活かす時代へ

発達障害であることを知ることでショックを受ける、と書きましたが、これからは「個々の特性」で勝負する時代であると思っています。これまでの時代は生産性が求められたため、組織の中でうまくやっていく能力や生産技術などが重要視され、脳の特性の標準的な人が適応しやすい社会が作られてきたと思います。しかし、物質的な豊かさが充足されたこれからの時代は、組織の中でうまくやることや物質的な生産性よりも、他の人には簡単に真似できないような「すごく得意」なことがあることが強みになると考えます。

脳の「障害」というと聞こえが良くないと思いますが、それを「すごく苦手」と捉える方が正確なように思います。標準的な脳は「苦手」から「得意」の範囲内での能力のバラつきがある一方で、「すごく苦手(障害)」から「すごく得意(才能)」までの能力のバラつきが見られるのが「特性の強い脳」であると思います。

「すごく苦手(障害)」 ⇔ 「苦手」 ⇔ 「得意」 ⇔ 「すごく得意(才能)」

こんなイメージです。

発達障害と診断されることは、否定的なことではなく、むしろこれからは(今までもそうだったのかもしれませんが)そういった特性の違うところがある人たちが「すごく得意」なところを活かして活躍する時代になると思っています。そうなれば、精神的にも豊かな世の中になっていくのではないかと思います。

とはいえ、今は時代の過渡期であり、「障害」や「特性」についての理解を得られない場合があります。

お子様が「発達障害」であると診断をされているけれど、そのことをどう伝えてどう理解させればよいのかをお悩みの方もいらっしゃると思います。そのような場合はぜひ当教室にご相談ください。それぞれのお子様やご家庭に合った形で、どのようにすればうまくご本人が受け入れ、理解されるのかを一緒に考えさせていただきます。

また、良書に出会ったときは、皆様に紹介いたします。